★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 保坂和志拡散マガジン  ∧ ∧   ★ぴょん吉くんはかつおぶし中毒★ =〆ェ^=          略して『ぴょんかつ』 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ 第59号 母のこと 其の弐(070506)  ----------------------------------------------------------------  途中でもヴィルヘルムは、フィリーネのやり方はだらしがない、と ぶつぶつ言いつづけた。ラエルテスは、「自分の性格に忠実な人を だらしがないとはぼくは言えませんね」と言った。「フィリーネがなに かを企てたり、約束したりするのは、その場になって、その企てなり 約束なりを実行する気があれば、という暗黙の条件のもとでのことなの ですよ。彼女が贈物をする場合だって、それをまた返してくれと言われ る覚悟をしていなくちゃなりませんからね」 「変わった性格ですね」とヴィルヘルムは言った。 「変わってなんかいませんよ。偽善者でないだけです。だからぼくは 彼女が好きなのです。それどころか、ぼくには女性を嫌う理由がいろい ろとあるのですが、彼女は女性を純粋に現しているからこそ、彼女と親 しくしているんです。彼女は本物のエヴァですよ。女性の始祖エヴァ です。女性は皆そうです。口にしないだけのことです」              『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』 ---------------------------------------------------------------- 母親のことについての続き。 年末に実家に帰ったときのこと。       ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆ そのとき実家には、父と母、兄夫婦とぼくの5人がいて、 葬儀屋に寄ってからおばさん家に行くことになり、 ぼくは車で帰ってたので、 父の車とぼくの車の2台で行こう、ということになって。 どういう分乗の仕方で、というのはぜんぜん決めてなくて、 とりあえず準備して外に出たら、 あれ、と思ったんだけど、 父の車が、スーッと出ていっちゃって…、 おれの車、軽なんだけどなあ、 と思ってるところへ母親が来て、 「あれ、おとうさんは?」 「なんか行っちゃったよ」 「あれなんだぺ、おとうさん」 で、ぼくの軽に、後ろに兄夫婦、助手席に母が乗り込んだのだ けれど、 母は乗り込むやいなや、車に置いてあった黒飴の袋を見つけ、 まるで自分がいまもってきたかのように、 「飴なめるか?」 と兄夫婦に飴を配り、自分も口に入れたのだけれど、 「うわっ、わたしニッキ駄目なんだ」 と口にいれたばかりの飴を包み袋に戻し、 車の前面にある黒飴の袋がおいてあったトレイにそれを置き、 ぼくは、そこごみ箱じゃないんだけどなあと、 思いながらも黙って見ていた。       ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆ なんかそんなどおってことないことなんだけど、 それを見ていたぼくにとっては、 なんか、母親の存在がすごく近くて、微笑ましいような感じがしたのです。 存在がすごく近い、というのは、母親と子供の関係で近い、 というのではなくて、 自分の心のなかにあるものに、そのときの母親の行動の光景が すごく近いものに感じられたということで。 ってこう書くとよくわからなくなっちゃうね。 というか自分でもよくわからないけど、 なんかすごく印象に残って、母親の存在をよく表しているような、 そんな感じがしたのです。       ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆ このあいだ、秋元康がラジオで面白いことを言っていて。 いわゆる「空気を読む」というのは大切なんだけれど、 秋元康の知り合いで、空気を読めない人がいる。 でもその人をみていると、すごくおおらかで好感がもてると。 例えば、玄関に履物をみんなきっちり揃えて脱いでいたら、 自分も揃えなきゃと思うけれど、 そんなことが人生にとってそんなに重要なことか、と。 人生にとって重要なことはもっと違うところにあるわけで、 些細なことは些細なことで、どうでもいいじゃないか、と。 「空気を読む」というのは、 本屋で週刊誌を買うときに、積んであるなかの一つ下、二つ下から 取り出して買っていくあさましさが感じられる。 別に誰かが立ち読みしたって、多少しわくちゃになってたって、 読むぶんには問題ないんだから、上から順に取ってけばいいじゃん。 と、その「空気を読めない」人はたぶん考えるんだろうなあ、 というようなことを秋元康が言ってました。 んー、なるほどねえ。       ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆ べつに母親が、空気を読めない、というわけではなくて、 むしろ母親は母親で彼女なりの空気の読み方、というのがすごくあるの だろうけれど、たぶん。 なんかその秋元康の話しをきいて、 黒飴うんぬんでぼくが母親に感じたものと共通する部分がすごく あるような気がして。 ■執筆後記■ 母親のことは、あともう一回だけ書きますね。 そいじゃまた。 ○○○お知らせ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ★出来るだけ等幅フォントでお読みください。 ☆ご意見・ご感想・投稿などはこちらへ   akama@din.or.jp ★「ぴょんかつ」は『まぐまぐ』( http://www.mag2.com/ ) を利用して発行しています。 ★「ぴょんかつ」の登録・解除は 『ぴょんちゃん倶楽部』(http://www.din.or.jp/~akama/)か 『まぐまぐ』(マガジンID:0000019217) で各自お願いします。 ★「ぴょんかつ」は転載自由です。勝手に拡散おねがいします。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 保坂和志拡散マガジン   ぴょん吉くんはかつおぶし中毒 略して「ぴょんかつ」                       第59号 発行人  あかま としふみ akama@din.or.jp               http://www.din.or.jp/~akama/ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆