大宮能売神
オオミヤノメノカミ
別称:大宮売神、大宮女神、大宮津姫神(オオミヤヅヒメノカミ)性別:系譜:天太玉神の子。天照大神の侍女神格:市の神、食物神神社:伏見稲荷大社 上社・南座、その他稲荷神社
 百貨店の神として知られる大宮能売神は、市場の産業に繁栄をもたらす市神である。この神は、京都の伏見稲荷大社に主祭神宇迦之御魂神に付き従うようにして祀られている。そこから、もともとは宇迦之御魂神(稲荷神)を祀る巫女だったが、のちに神格化されて大宮能売神と呼ばれる神になり、市の守り神として信仰されるようになったと考えられている。穀物神に仕える巫女から発展したこの女神は、宮廷祭祀と深く関係しており、宮廷の中に祭られている八神殿に食物神の御食津神(ミケツノカミ)と並んで祀られていた。その役割は、天皇が神に供える神饌を扱うというものだ。神饌とはつまり、天照大神への供え物である。そこから、大宮能売神は天照大神に仕えて、人間との間をうまく取り持つ神としての役割ももっているという説もある。

 その大宮能売神が、さらに市神として広く信仰されるようになったきっかけは、やはり世の中の商業の発展との関わりである。食物を中心に扱う市で守護神として祀られたことが、市神としての始まりといえよう。
 大宮能売神と並び、市神として知られる神霊に神大市姫神がいる。神大市姫神は、平安京の官営の市場の守護神として祀られたとされている神である。ところが、一説には、祀られた神はこの大宮能売神だったともいわれている。そこから考えて、伏見稲荷大社は平安京遷都の時に空海が王城鎮護のために建設した東寺の鎮守神として崇められた。その伏見稲荷大社の神であり、しかも食物を支配する神である大宮能売神が、都人の食物を賄う市の守り神として祀られてもなんら不思議なことではない。
 稲荷神は、商業の発達とともに商売繁盛の神として広く信仰を集めるようになった。その商業神としての発展を協力に支えてきたのが、市の神、商売の神として神威を発揮した大宮能売神なのである。

 もうひとつ、大宮能売神には開業式神(ナリワイハジメノカミ)、開店式神(ミセビラキノカミ)という肩書きがある。その神徳については、商売福徳守護、要するに七福神の大国様や福助人形、招き猫のパワーと同じようなものと考えていい。つまり、商売がうまくいくように和合、親睦、円満、忍耐、寛容、愛敬などといったことを司るのが大宮能売神の機能でもあるのだ。