国之常立神
クニノトコタチノカミ
別称:国常立尊、国底立尊性別:系譜:神世七代の第一代目の神神格:国土形成の根源神、国土の守護神神社:日枝神社、大鳥神社、御岳神社、熊野速玉大社、玉置神社
 国土が形成されつつあるときに生まれた神である。 「国」は天に対する地の意味であり、また「常」は、底と同じ意味で、この神と機能的に対応する神として天之常立神(アメノトコタチノカミ)がいる。 国之常立神は、宇宙が誕生し、国土がまだ混沌としてどろどろの状態のときに登場し、泥土を凝集させて生命力(神霊)が宿る大地を形成したとされる。 日常的にはあまり馴染みのない部類に属する神であるが、神のランクとしては、万物の生命活動の源泉に位置し、日本の神々の最高位のグループに含まれる。
 国土創世神話に登場する根源神は、ほとんどがその役割だけが述べられていて、特に目立った活動はしていない。 それだけに、具体的なイメージとしてとらえにくいというのはこの神にもいえることであるが、それでもわずかな手がかりからその特徴を探ると、この神は、男女の性別のない独神(ヒトリガミ)である。 さらに、最初に現れた様子は、まだ天地が固まらず、浮き漂っているような状態の中に、葦の芽が泥の中から生えたような姿で現れたとある。 これは、我々には実在するものとして当たり前に感じられる国土が、産の中から初めて宇宙に存在することになった、その初源をイメージしたものと考えられる。
 時代の波の中で神道も様々な形態で展開し、過去には多くの神道流派が生まれている。 そうした中で国之常立神は、太元・元始・元神といった形で、日本の心的世界の中核を形成する「宇宙の本源神」的な存在とされている。 たとえば、大本教では、その根本神である「艮の金神(ウシトラノコンジン)」が国祖の神=国之常立神とされている。 国祖の神は、これまで隠れていたが時節の到来と共に出現して、世にはびこる悪神を除いて理想の新政をもたらす、というのがその神威である。
 また、吉田神道では、もっとも重視する大元尊神(中国の老子の大元の節に基づくもので、天地に先立ち、陰陽を超え、始めも終わりもなく、宇宙のすべてに顕現する)にあたる神として、やはり国之常立神を位置づけている。 大元尊神とは、宇宙の根源を司る存在である。 さらに、伊勢神道(度会神道・外宮神道)でも宇宙の根源神とされており、天之御中主神と並び教派神道の中では大変重要な役割を持つ神なのである。