石土毘古神
イワヅチビコノカミ
別称:特になし性別:?系譜:伊邪那岐命伊邪那美命の子神格:土石の神、家宅の守護神神社:石鎚神社
 石や土というのは山と関係があるから、こうした名前のつく神名はだいたい山の神の系統と考えていい。 ただし、同じ石や土でも、人間の生活の中にどのような形で関わっているかによって、神霊としての性格も違ってくるのは当然のことである。 そういう意味からいうと、石土毘古神は一般に家宅の守り神とされる。 日本の家屋は伝統的に木造であるが、その土台には石が用いられ、壁には土が用いられてきた。 その石と土という建築材を司る神霊という性格から、家を守り、進入してくる災厄を防除すると考えられるようになった。
 「古事記」の伊邪那岐命伊邪那美命国生みの物語で、いろいろ中身を生み出す中のひとつとして、建物の土台、柱、壁といった主要な部分を司る六神の誕生のことが記されている。 その一柱として石土毘古神は、家を建てるときの基礎材料となる石と壁土の神とされている。 ついでにいえば、その次に生まれたのが石巣比売神(イワスヒメノカミ)という女性神で、こちらは石と砂を表している。 石土毘古神と石巣比売神は兄妹のようなもので、どちらもその性格からして家屋建築に深く関係する神といえる。 ただし、こうした神話での役割は、一般の信仰とはあまり結びついていないようである。

 石土毘古神は、愛媛県西条市の石槌神社の祭神として知られる神である。 当社は、西日本の最高峰である秀麗な石槌山(標高1982m)を御神体としている。 ということはつまり、そもそも石槌神社の祭神は、石槌山に宿る地主神であったということになる。 地主神というのは、古くから石槌山の周辺地域に暮らす人々の生活を守る守護神だった。 だから、石土毘古神の原像は、本来、こうしたところに見ることができるだろう。 神話にある家屋の建設に使われる石と土壁の専門家といった役割は、のちに神々が体系化されるなかで与えられた性格と考えられる。