99.01.14

むう、のんびり風呂に入っていたら遅れてしまった。
まあ7、8分ってところかな。
Aさんはもちろん来ていない。
店に入ると店長が1人だけ。
どうやら午後は1人でやったらしい。
挨拶したら、むくれて、
「5時になっても誰もこねーんだもーーん。」
と言っている。
謝ったら笑いながら行ってしまった。
なんで怒らないのか不思議。

Aさんが5分後くらいに来る。
店長はサクッと帰る。

俺の友達登場。
予告は受けていたのでたいして驚かない。
俺が貸してた漫画を返しに来てくれたようだ。
同じ学校なのに今年顔を合わせるのは初めてだ。
不思議なことだが、気にしてもしょうがない。
ヒマすぎたので少ししゃべる。
帰り際に肉まんを2個買っていってくれた。
いい人だ。

明日の成人式についてAさんと話す。
何を着るのかと訊かれたのでスーツだと答えると、なにやら考え込んでしまう。
まさかと思い、「スーツ持ってんスか?」とたずねると、
「スーツ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ないねぇ。」と言われた。
大学の入学式に着たやつはあるらしいが、それを就職活動に流用し、
あげくの果てにろくに活動もしないで副店長におさまったのだから、当然と言えば当然だが。
余談だが、Aさんが副店長におさまった経緯について店長に聞いたことがある。
サ●クスに看板替えをするときに、当時バイトで、卒業を控えていたAさんに、
「Aちゃん、副店長やってみない?」と言ってみたところ、
「・・・うん。」と言われたらしい。
店長は、「あいつあんまり考えてねえよ、たぶん。」と言っていた。
多分じゃなくて絶対考えてないと思うが。

店内をぶらぶらしながら、ふと棚に目をやると、目の前に『合格どら焼き』があった。
そのへん一帯が、受験生用のもので固めてあるが、
どら焼きに『合格』って焼き付けたところで、たいした意味はないと思うぞ。
そういえばこのシリーズ、去年もあって、まったく売れなかった気がする。
あたりまえだ。
俺の受験期にこんなもの見つけたら店燃やしてるぞ。
本部ってのは人の神経逆なでして嬉しいのかね?
今年も当然売れる気配がない。
いいかげんにやめろよな。

なんか突然Mさんが来た。
子供を2人連れている。
1人は見たことがあるが、もう1人は?
よく分からないが、急いでいるようだ。
のほほん茶のダンボールにカバンを投げ込んで、預かってくれと言って去っていった。
この人もよく分からない。

レジの後ろに、本部からの通達事項が置いてあったので見る。
なんでも、FF8の発売に先駆けて、予約をいっぱい受けろと書いてある。
今うちの店で受けた予約は29件だが、80件にがんばって増やせとある。
そんなもん、どうがんばれと言うんだろう。
そう思っていたら、レジに来た客に無差別に一声かけろと書いてある。
はっきり言ってヤダ。
Aさんにどうやるのかと訊いたら、
「予約いかがっスかぁーー。」ってやるんだと言われた。
もっといやだぞ。
さらに、「FF8予約受付中」と書いた紙を名札の下につけろとも書いてある。
Aさんに「これはいやだよねえ。」と言おうと思って振り向くと、
・・・・・・もうつけてた。
俺の一瞬の隙をついてつけたらしい。
まあいやじゃないんならやってくれ。
そう思っていたら、すぐに「飽きた。」と言ってはずしだした。
俺、この店でよくもってるよなあ。

Mさん再登場。
預け物をとり返しに来たらしい。
休憩室に入っていく。
子供2人は連れたままだ。
何を思ったか、Aさんがついていく。
どうやら、見知らぬ方の子供と話したいらしい。
「名前はぁ?」とか言ってるのだが、完全に無視されている。
俺には関係ない。
Mさんに廃棄の蔵屋ラーメンを食われないかと少し心配する。
初めて見るものだったので、1度は食わないと店員の名がすたる。
Mさんの息子がそれをじーっと眺めているので、レジを打ちながらもかなり不安。
結局なにごともなく帰ってくれた。
胸をなでおろすひととき。

今うちの店でやってる「北海道フェア」なるもので、奇妙な品物が多い。
毛ガニラーメンにふと目が行く。
どういうものなんだろう。
裏面を見ると、毛ガニエキス入りと書いてある。
ますます興味が出るが、ここでは作れない。
これはあきらめることにする。
レジに戻ると、Aさんも気になっていたようだ。
「おいしいのかなあ・・・。」とつぶやいている。
そのうちに、「毛ガニまんにすれば良かったんだ!」
と騒ぎ出した。
中華まんの一種で、あまり売れないままカットになったカニまんのことを言ってるのだろう。
そこまでは分かるが、毛ガニまんってなんだ?
訊いてみると、そういう名前にしとけば売れたんだと言う。
そんなバカな。
疲れ果てて休憩室にもぐる。

休憩室の机が、いつにも増して汚い。
触っただけでべたべたする部分があるのだ。
甘いものをこぼしたらしい。
こぼすのは構わないが、ちゃんとふいとけよな。
以前、コーヒーかなんかをこぼされてボタンの隙間がべたべたになり、
使いにくくなった電卓を俺が掃除したことを思い出す。
この店では、気にした奴が負けなのだ。
俺はいつも敗者である。

机を拭いて、さっきの蔵屋ラーメンを作る。
これは毛ガニラーメンと違って、お湯をかけるだけで作れるやつだ。
カップメンとはちょっと違うが、似たようなものだな。
トロ肉チャーシューとか書いてあるので気になってたのだ。
食ってみるが、別にうまくない。
チャーシューは、妙に硬かった。
すじくらい切ってから売り物にした方がいいと思う。

Aさん休憩。
その間におばちゃんが買い物に来る。
会計まで終わったところで、ポイントカードを忘れてたと言って出してくる。
それは良いんだが、「ポイント変えてください。」
はぁ?まだ50ポイントしかたまってないが。
確かこのカードには50ポイントでジュース1本という効果もあったような。
そのことを言ってるんだろうか?
よく分からないし、今からこいつにジュースを持ってこさせるのも面倒だ。
「もっとためた方がいいっすよ。」と言ってやる。
おばちゃんは納得して帰って行った。
ほんとはこのカード、1月いっぱいで終わりなんだが。
がんばってためてくれ。

Aさんに弁当の発注を頼まれる。
この作業、休憩でもないのに座ってタバコを吸えるのでけっこう好きだ。
北海道フェアのせいで、発注数が多くなってしまいそうだったので、
増やしていいのか大声で訊いてみる。
そのとたん、レジに客登場。
俺の質問は保留となった。
Aさんは、レジ打ちを終えて、こっちを見ると、
「なんか言った?」と訊いてきた。
俺が答えようとすると、
「言ってないよね。言ってない言ってない。」
とか言いながらどこかに歩いていってしまった。
もういいや。
予想と違った数が届いても俺のせいじゃないぞ。

発注を終えて出ていくと、八百屋のおやじが来た。
うちの店に野菜を仕入れている人だ。
来る曜日が決まっていないので、いつでも不意打ちである。
奴が持ってきた野菜に値札をつけて、棚に並べる。
野菜の伝票を整理しながら休憩を取る。
必要事項を書きつけて、ファイルに閉じようと思って、ファイルを開く。
ばさばさっ!!
中身が落ちた。
いくらなんでもつめ込みすぎだ。
許容量の2倍は入ってるぞ。
この店のファイルはほとんどがそうだ。
1度根元のリングをはずすと、5分ぐらい格闘しないと閉まらない。
分かっていたのにうっかりしていた俺が悪いんだろうか。

八百屋のせいで満足に休憩も取れずに22時を迎える。
Tくんがやってくる。
だいぶ仲良くなった。
このあいだ一緒にラーメン屋に行ったのが効いたんだろう。
まあ、どうせたいして話すことはない。
明日は成人式だ。
早く帰って寝よう。

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