住宅瑕疵担保履行法ってなんだ?
・
2009年10月以降に引き渡しなら、着工前に保険契約が必要・要注意! 保険をかけないと
2000万円の供託金
来年
10月から「住宅瑕疵担保履行法」が施行になります。この法律は、新築住宅を請け負う大工・工務店に、「欠陥があった場合の補修資金確保」を義務付けるもので、「知らなかった」ではすまされません。ここで、法律の内容や対処法を紹介しましょう。
住宅瑕疵担保履行法ってどんな法律?
・正式名称は「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」。
2007年5月に成立した消費者保護のための法律。「購入した住宅に欠陥がみつかったが、販売業者は倒産していた」――そんなときにも消費者が、補修費を受け取れるという法律。2009年10月1日以降に引き渡しとなる新築住宅から適用となる。
瑕疵担保責任とは 「瑕疵担保」は法律用語。「売買するものに欠陥があった場合、買主が追及できる売主の責任。買主は損害賠償の請求か契約の解除ができる。同様に請負契約でも、欠陥があった場合、請負人は発注者に対して損害賠償等の責任を負う」 |
法律ができた背景は?
・新築住宅については、「住宅品質確保法」(
2000年4月施行)で、売り主・請負人に対し、「10年間の瑕疵担保責任を負うこと」が義務づけられている。・ところが、
2005年に「構造計算書偽装事件」が起き、売り主・請負人の財務状況(倒産、財政破綻など)によっては、責任が果たされない場合があること、つまり品質確保法だけでは、消費者保護としては不十分なことがわかった。・実際に瑕疵担保責任として補修などをおこなうには、売主・請負人にそのための資力が必要。そこで
10年間の瑕疵担保責任を確実におこなえるよう、「裏付けとなる資力確保を義務化する」新しい法律として、制定されることになった。
構造計算書偽装問題 1級建築士が構造計算書を改ざんし、耐震強度が不足したマンションや物件が建築された事件。 2005年に発覚。1級建築士に加え、強度不足を知りながら販売したとして、マンション業社の社長らの刑事責任が問われた。売り主である業者が倒産してしまい、住民は住宅ローンの上に建て替え・大規模改修費用も負担しなくてはならなくなってしまった。 |
法律の内容はどんなもの?
・来年(
2009年)10月1日以降にお客さまに引き渡す新築住宅について、売り主(宅地建物取引業者)または請負人(建設業者)は「保証金の供託」または「保険への加入」のどちらかをしなくてはならない。
対象となるのは引き渡しから
・
2009年10月1日より前に建築確認や契約が済んでいても、「その住宅の引き渡しが2009年10月1日以降」のものは対象。「9月中に販売予定だった・完成予定だったが遅れてしまった」としても結果的に10月1日以降なら対象となる。
対象となる住宅は?
・法律の対象となるのは「新築」の「住宅」。
・「新築」とは、@建設工事完了の日から起算して
1年以内、A今までに人が住んでいない、こと。・「住宅」とは、「人が住むための家屋または家屋部分」のこと。戸建住宅、分譲マンションはもちろん、賃貸住宅も住宅。
・以下のものは対象とならない
@竣工後、
1年を経過した住宅Aいったん人が住んだあと、転売された住宅
B住宅でない建物(事務所・倉庫・物置・車庫など)
義務付けられるのは具体的にはだれ?
・以下の2者に義務付けられる。
@新築住宅の請負人が、建設業法の許可を受けた「建設業者」の場合
(建築一式に限らずすべての建設業許可業者が対象)
A新築住宅の売り主が、宅地建物取引業法の免許を受けた「宅地建物取引業者」の場合
・建設業法の許可を受けていない建設業者が請け負った新築住宅は対象外
・ただし、買い主・発注者が「宅建業者」である場合は、対象とはならない
瑕疵担保の対象となる部分は?
・対象となるのは「住宅品質確保法」で対象となっている部分と同じ「住宅の基本構造部分」で、以下の2つ
@構造耐力上主要な部分
住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組み、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打ち材など)、床版、屋根版、横架材(梁、桁など)
A雨水の浸入を防止する部分
屋根、外壁、開口部に設ける戸や枠など
雨水を流す排水管のうち屋根、外壁の内部、屋内にある部分
資力確保にはどうしたらいいの?
・「供託」と「保険」の
2つの手段がある。必ずどちらかで対応しなければならない。・「供託」とは、過去の供給戸数に応じて算定された金額の現金等を供託所(法務局)に預けておくもの
・「保険」とは、保険会社との間で「瑕疵が判明した場合に保険金を支払うことを約した保険契約を結ぶ」もの(つまり保険に入るということ)
・すべてを供託または保険で対応してもいいし、一部は供託で一部は保険という組み合わせもできる
資金確保の報告義務があるってホント?
・年に
2回(3月31日と9月30日)「基準日」というものが設けられる。・基準日から
3週間以内に、供託や保険の加入状況を、建設業許可・宅建免許を受けた人(大臣や知事)に届け出る義務がある。・届け出のときに必要な添付書類は次の通り。
@届け出様式(施行規則に規定された届け出様式)
A帳簿の写し(基準日前
6カ月間に引き渡した新築住宅に関する帳簿)B保険契約を証明できる書面(新たに保険加入した分だけ。書面=保険契約締結書は、基準日直後に保険会社から郵送される)
※供託の場合は供託書のコピー
・「届け出がない」「内容に虚偽がある」だと
50万円以下の罰金となる。・そのまま、基準日の翌日から
50日を過ぎても届け出をしなかったときは、新たに請負・売買契約はできない。もし、契約をおこなうと、1年以下の懲役か100万円以下の罰金または両方。
帳簿の記載事項・保存期間が変更されます 今回、資力確保の義務や内容の届け出が義務づけられるのにともない、帳簿の記載事項や保存期間が変更になります。 記載事項に次の項目を追加 →床面積、共同請負の場合の瑕疵担保割合、保険加入している場合の保険会社の名称 保存期間 → 10年間(現行は5年間) |
供託のしくみは?
・過去
10年間に引き渡した新築住宅の戸数に応じて算定した額の保証金(現金や国債)を、10年間、法務局等に供託(管理を委任し、債務の弁償にそなえるもの)する。ただし、施行日から10年間は経過措置として「法律施行日以後の引き渡し戸数」が供託金算定の対象。・いったん供託したお金は
10年間引き出すことができない。・供託が始まるのは、最初の基準日である平成
22年3月31日。その後、各基準日の段階で過不足を精算する・供託の場合は、瑕疵が発生したら、業者が自らの費用で補修をおこなう必要がある。
・供託の算定式 供給戸数の合計×乗ずる金額+加える金額=供託金
・供給戸数に応じた供託額
供給戸数の合計(超と以下) |
乗ずる金額 (円) |
加える金額 (円) |
|
供給戸数の合計 (超と以下) |
乗ずる金額 (円) |
加える金額 (円) |
1 |
2000 万 |
0 |
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1 万〜2万 |
1 万9000 |
2 億5000万 |
1 〜10 |
200 万 |
1800 万 |
|
2 万〜3万 |
1 万8000 |
2 億7000万 |
10 〜50 |
80 万 |
3000 万 |
|
3 万〜4万 |
1 万7000 |
3 億 |
50 〜100 |
60 万 |
4000 万 |
|
4 万〜5万 |
1 万6000 |
3 億4000万 |
100 〜500 |
10 万 |
9000 万 |
|
5 万〜10万 |
1 万5000 |
3 億9000万 |
500 〜1000 |
8 万 |
1 億 |
|
10 万〜20万 |
1 万4000 |
4 億9000万 |
1000 〜5000 |
4 万 |
1 億4000万 |
|
20 万〜30万 |
1 万3000 |
6 億9000万 |
5000 〜1万 |
2 万 |
2 億4000万 |
|
30 万〜 |
1 万2000 |
9 億9000万 |
保険のしくみは?
・個々の新築住宅ごとに保険に入って保険料(掛け捨て)を払う。引き渡し後、瑕疵があって補修をおこなう際には保険金が支払われる
・保険の対象となるのは、材料費用・調査費用・仮住宅移転費用など。
・保険期間は引き渡し日から
10年間・供託をおこなわない場合は、保険に入らなくてはならない。
・保険に加入する際には、施工段階で検査(
1回目・基礎配筋時、2回目・躯体工事完了時)を受ける必要があるので、着工前に手続きを始めなければならない。・損害に対して支払われる保険金の割合
@業者に払う場合 (補修に必要な額−免責
10万円)×80%A業者倒産でお客さまに払う場合 (補修に必要な額−免責
10万円)×100%・支払われる保険金の上限は
2000万円(オプションあり)・保険料や設計施工基準は保険会社によって違う
・不具合が生じた場合の問題解決をスムーズにおこなえるよう、「住宅紛争処理機関」が利用できる
保険は前もって準備が必要
・保険に入る場合、引き渡しの時にいきなり加入を申し込むことはできない。
・まず、保険会社を決めて事業所届け出をして、登録しておくこと。
・建築中に現場検査等もあるので、着工前に保険契約の手続きする必要がある。
故意や重過失による瑕疵はどうなる?
・故意や重過失による瑕疵については、業者(売り主・請負人)が自らの費用で補修することが原則で、保険金は出ない。
・ただし、業者が倒産などの場合は、保険金の支払い対象になる。そのために保険会社が共同で「住宅購入者救済基金」をつくり、基金が支払いをおこなう。
|
供託と保険を比較すると
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供 託 |
保 険 |
費用 |
最低でも1戸分 2000万円が必要戸数が増えれば割安に |
1戸につき6万円〜 10万円 |
費用は戻る? |
10 年後に戻ってくる |
掛け捨て |
瑕疵があると |
補修費用は自費で |
保険金が支払われる |
検査は? |
第三者機関の検査はない |
保険会社が最低2回の検査 |
紛争が起きたら? |
紛争処理機関を利用できない |
紛争処理機関を利用できる |
供託金制度が導入されたわけ 国土交通省では当初、保険を中心にした制度を検討。その報告書を審議会建築部会に提出したら、「保険の一律義務化につながる」との批判が上がり、大企業にとって有利な供託制度が導入された。 保険は巨大なビジネス市場 400億〜500億円の保険市場が誕生するといわれている |
どの保険会社がいいの?
・設計施工基準、保険料などは保険会社によって違う
比較表は
こちら
保険契約の流れは?
@保険会社への登録
事業所が「事業者届出」
必要書類
(届出申請書・預金口座振替依頼書・建設業許可や宅地建物取引免許証の写し)
※中小企業であることが証明できるもの(資本金、従業員の数が分かるもの)
↓
保険法人
保険の流れ・設計施工基準などの説明をおこなった上で、届け出の内容、事業者届出料の入金確認後、
事業者届出証を発行A保険契約(1棟ごとにおこなう)
設計・契約
※重要事項説明書を必ず確認する↓
建築確認
↓
保険申し込み
※必ず住宅の着工前におこなうこと必要書類(申込書・設計図書・請負契約書か売買契約書・確認済証写しなど)
↓
着工
※保険会社の設計施工基準に適合するように(書類審査や現場検査で設計施工基準を満たさないことが明らかになった場合、差し戻され手直しを求められる。)
↓
現場検査
※基礎配筋完了時と躯体工事完了時の2回4階以上は、検査3回以上(基礎配筋、中間階床躯体、屋根防水)
↓
工事完了
↓
保険証券発行の申請
↓
保険法人が保険契約を締結し、
保険証券を発行↓
住宅の引き渡し
※引き渡しまでに必ず、業者はお客様に重要事項説明をおこなう
事故が発生したら?
・住宅取得者から事故の連絡を受けたら、まず事業者は現場の確認し、状況や原因を把握
↓
・保険金支払いの対象になると思ったら、保険会社に連絡する
↓
連絡を受けた保険会社は、事故を調査
↓
瑕疵と認められれば、事業者が補修工事をおこなう
↓
補修工事終了後、必要書類を添えて保険金を請求
↓
保険金が支払われる
対応を義務付けられてない人のための任意保険もある
比較表は
こちら
Q&A
なぜ中古住宅は対象にならないの?
・品質確保法でも中古住宅は除外されている。これは中古住宅のキズや劣化が「建築当初の瑕疵」か「前の居住者の使用によるもの」か判定が困難だから。
なぜ、発注者が宅建業者の場合は対象外なの?
・消費者保護の観点からは、一般の買い主や発注者を救済することが重要であり、専門知識をもつ業者間の取り引きは、法律による資力確保を義務付けてまで保護すべきとは考えられないとの理由から。
支払限度額2000万円でだいじょうぶなの?
・住宅保証機構の過去のデータでは、すべての瑕疵が
2000万円以下とのこと。またいわゆる億ションのような建物価額すべてに保険を義務付けるのは過剰な規制(保険料も高額)となるため。保険会社が破綻したらどうなるの?
・万が一保険会社が破綻した場合、すべての契約が他の保険会社に引き継がれ、住宅購入者の利益は引き続き保護される。
保険料を販売価格に上乗せしていいの?
・保険料の負担コストを販売価格に転嫁することも可能。
誰でも保険に加入できるの?
・保険会社は、だれでもどんな工法・タイプの住宅の申し込みでも受け付ける義務がある。「忙しい」「会社の経営状況が良くない」などの理由で申し込みを断ることはできない。また現場検査の基準についても建築基準法レベルを想定しており、通常の設計・施工レベルであれば問題なく保険に加入できる。
保険料は地域によって差があるの?
・地域による差はない。
「工事完了の日」っていつ?
・工事の全過程を終了して、買い主や注文主への引き渡しを残す段階のこと。
この保険はクーリングオフできる?
・営業または事業のための保険契約(消費者向けの契約ではない)であり、クーリングオフの対象ではない。
保険申し込みをした戸建の分譲住宅で、売れずに竣工から1年を経過したものは対象ではなくなるので、保険料を返してもらえるの?
・すでに払った保険料から、契約に至るまでに要した事務経費を控除した額が返還される。ただし、現場検査をおこなっているので現場検査手数料は返金されない。
請負業と販売業を兼ねている登録事業者ですが、2つの事業とも登録の必要がある?
・事業者届出は、1業者として
1つの届け出でかまわない。分離発注でも、資力確保義務の対象となる?
・分離発注の場合でも、住宅の構造耐力上主要な部分等にかかわる施工業者は、品確法の瑕疵担保責任の対象。したがってその事業者が建設業の許可業者なら義務がある。
関係リンク集
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